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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

授業の作り方2026―イマドキの作文授業とAI対策

読解授業についてお話した回では、文字→ことば→文→文章……と広がっていく読解の世界について、また手書きのことばに対して文字入力する「打ち言葉」について取り上げました。今回はそれらをアウトプットできるようになるための授業、作文授業についてお話していきたいと思います。後半は昨今問題となっている生成AIの使用について考えていきましょう。

「作文が書ける」とは

「日本語教育の参照枠」の言語能力記述文(活動Can do)では、「書くこと」について下記のようなカテゴリーのCan doがレベル別に挙げられています。

 ・総合的な書く活動

 ・創作

 ・レポートやエッセイ

 ・一般的な言葉でのやりとり

 ・通信

 ・記録・メッセージ・書式

皆さんはこれらのカテゴリーからどんな「書く」タスクを思い浮かべるでしょうか。それらのタスクは学習者の学習目標に向かった、偏りのないものになっているでしょうか。

作文授業の目標を考える際、どのカテゴリーでも、テーマ(内容)・書き方(文字・文型・文体)・構成の3つがポイントになってくるかと思います。この3つについてそれぞれ見ていきましょう。

「テーマ(内容)」…レベルに合ったテーマを。書く前にはプレタスク

初級では自己紹介や日常のことなど、学習者にとって身近で個人的なテーマを扱います。

そしてレベルが上がるにつれ、ニュースに関する意見文や調べたことを報告するレポート等、より社会的で一般的なテーマで、より広く、詳細な内容を書くことが求められます。

いずれにしても、どのレベル・形式で書くにしても、学習者がすぐに書く作業に入れるように、書く前にはテーマについて話し合うプレタスクをしておくと良いでしょう。

「書き方」…デジタル文字入力についても指導を。文体の意識づけも大切!

手書きの作文を書く際に、原稿用紙を用いて書き方のルールを指導してきたように、デジタルで作文を作成する場合にも、こちらが想定する形式に仕上がるように、書式やフォント、フォントサイズ等の設定の仕方を必要に応じて指導します。それに加え、ルビの入力方法や文字カウントの機能等、学習者にとって便利な機能も紹介しておくと良いでしょう。

初級の場合、作文中に使ってほしい、使えると便利な文型があれば事前に導入しておきます。中上級になり「です・ます」と「だ・である」の使い分けができるようになったら、文体の統一を徹底します。レベルが上がったら、テーマに合わせて書き言葉と話し言葉、かたい表現とくだけた表現等の使い分けも意識するようにします。

例)○竹の中から生まれたかぐや姫は、おじいさんとおばあさんに育てられました。

  ?竹内部から出生したかぐや姫は、高齢者夫婦によって育成されました。

(上記は極端な例ですが)レベルが上がると例のように文法も意味も合っているけれども不自然な文というのが出てきます。通じるからと言ってそのままにせず、伝わる印象が異なることを指導していきましょう。

「構成」…構成を指定してから書き始めるという方法も

長文が書かれていても結局何が言いたいのかわからない作文がときどきあります。そうならないために、どのような流れで、それぞれの段落に何を書くのか、そこにどのような接続詞を使うのかなど、文書の構成を指定してから書き始めるというのも1つの方法です。一般的な文章の構成を学んでおくことは長文読解の授業にもつながっていきます。

ちなみに、メールやビジネス文書は、どこに何を書くか定型があります。「日本語の文書は最初と最後の挨拶が長すぎる」と以前学習者に言われたことがあります。文書の定型を導入した際、子どもの学校からの配布文書が読めないと言っていた学習者が、読み飛ばしてもいいあいさつ文と本題の書かれている場所がわかったと喜んでいたことがありました。今はSNSでのやり取りが多くなり、ネイティブの中にもそういった「型」のある文書に抵抗のある若者がいるようですが、学習者の状況によってはそのような文書の構成を学んでおくメリットは、まだあるようです。

皆さんの授業では、どのようなテーマで、どのような書き方で、どのような構成で書かせますか。テーマに合った文章を書くというのが目標であれば、それにふさわしい書き方や構成を考え、学習者に伝えます。構成を学ぶことが目標であれば、その構成に合ったテーマを指定します。目標が具体的にイメージできていれば、指導も評価もしやすくなります。

コピペ・AIの使用について考える

作文授業の最近の課題と言えるのが、いわゆるコピペ(コピー&ペースト)問題ではないでしょうか。少し前には、自分の作文を自動翻訳したものや、インターネット上の文章をそのままコピペした作文に手を焼いたものです。そういった作文は、あまりに不自然な日本語や学習者のレベルに合わない日本語の使用ですぐに本人のものではないとわかったものですが、生成AIではより自然で指定したレベルの文章を生成することができますので、コピペを指摘するものなかなか難しくなってきました。

「間違えてはいけない、正解を書かなければいけない」という考えが抜けない学習者には「コピペをしないで、自分で考えた文章を書いて」というこちらの思いはなかなか伝わらないようです。コピペ問題に関しては、さまざまな教室で試行錯誤が続いていることと思います。

たとえば筆者の作文クラス(初級~中級)では、作文を発表する時間を設けているため、クラスメートにわかることば(つまり授業で学習したことば)を使って書くこと、また学習していないことばを使う場合は自分で説明する方法を考えることをルールとしています。

添削時に難しすぎることばには線を引いて返却し、説明方法を考えてきてもらいます。ことばを説明する練習にもなりますし、これによって何も考えずにコピペした作文は少なくなったように思います。

AIを活用する仕組みづくり

AI対策はまだ始まったばかりです。筆者は授業の初めに、生成AIによってもたらされた誤情報の例をクラスで共有し、どこが間違っているのか話し合い、AIの情報の脆さについて導入しています。

あえて生成AIの文章を引用させるというのも1つの方法です。あるテーマについて生成AIが挙げた賛成・反対意見を引用し、それ対する自分の考えを述べるという方法です。

書く前に、「引用」と「コピペ」の違いについて話し合います。引用とコピペの決定的な違いは出典元が明記されているかどうかです。それが分かった時点で出典の書き方を導入します。その後、AIの出した意見とそれに対する自分の意見を書くように指示します。作文の最後にはいつ、どの生成AIを用いて、どのようなプロンプト(AIへの指示)を与えたかを「出典元」として記載してもらいます。あえて引用する部分と、自分で考える部分を作るわけです。また、自分の作文を生成AIに添削してもらい、その違いについてさらにまとめてもらうということもできると思います。

作文授業が生成AIのコピペで終わらないような授業の仕組み今後さらに考えていく必要があるでしょう。海外ではAIを規制する方向に進んでいるようですが、日本ではそのような対策はまだほとんど聞かれません。日本語学習が生成AIに飲み込まれないように、生成AIを上手に活用し、学習者自身が考えたくなるような授業の仕組みを目指していきたいものです。

執筆:望月雅美

さまざまな日本語教育機関でこれまで8~88歳の日本語クラスを担当。現在、埼玉大学日本語教育センター非常勤講師兼諸々。著書に『日本語教師の7つ道具シリーズ1授業の作り方Q&A78編』(大森雅美名義、共著)『どう教える?日本語教育「読解・会話・作文・聴解」の授業』 (共にアルク)などがある。音楽と笑いと自然を愛する3児の母。