
日本語教師にわからない日本語なんて……ある! この記事では、NJ編集者(妙齢)が「よく見るけど実はよくわかっていない」「今さら誰かに聞けない」流行語にあらためて向かい合ってみたいと思います。流行語=言葉の乱れ……などと思わず、日本語の奥深さや面白さを見つめるきっかけにしてください。
#10 「界隈」界隈
みなさん、お久しぶりです。この記事では「流行の周回遅れ」にある、今さらすぎて誰にも聞けない流行語について取り上げていますが、ある程度定着している言葉がなかなかなくてネタ切れに……。今後も「これだ!」というものがあったら更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
★「界隈」今昔(いまむかし)
「●●界隈」という言葉は、2024年にユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされましたので、ご存知の方が多いと思います。
「界隈」の本来の意味は「ある場所とその辺り一帯」です。
例1:歌舞伎町界隈で名の知れたホストクラブが閉店したらしい。
また、ある特定の業界や趣味などに関わる集団について表すこともあります。
例2:美容界隈ではここ数年、美容外科診療を行うクリニックの増加が目立っている。
しかし近年では、インターネットやSNSのコニュニティー全体を「ネット界隈」「Instagram界隈」のように呼んだり、「●●が好きな人」という意味で「ニコ動(ニコニコ動画)界隈」「ゲーム界隈」と呼んだりする使い方が増えてきました。先ほどの「美容界隈」も、「美容が好きな人」という意味で使われることもあります。「界隈」の解釈が広がっているといえるでしょう。
例3:
A「ゲーム界隈でいえば、ニンテンドースイッチ2が話題だよね。」
B「俺、ずっと抽選ハズレてるんだけど、いつになったら手に入るんだろ……。」
★進化する「界隈」
ここまでの「界隈」については、知っているよ、という方も多いと思います。しかし、Z世代の「界隈」はさらに進化しています。
・風呂キャンセル界隈
最近よく見る「風呂キャン」ですね。これは「お風呂やシャワーが面倒くさいので入らない、キャンセルする」という意味です。
日本では、「お風呂に入らないのは不潔」「お風呂に毎日入るのが当たり前」という意識があり、お風呂に入らないことに後ろめたさがあった人たちが「風呂キャンセル界隈」というユーモラスな言い方に共感した、というのが話題になった理由のようです。一方で、精神的な理由などで入りたくても入れない人もいることが指摘されており、使い方には注意が必要です。
例4:
A:「もうこんな時間! 今日は疲れたから風呂キャンしようかな……。」
B:「Aちゃんも風呂キャンセル界隈? 実は私、もう3日入ってない。」
・自然界隈
これは「その辺りの自然」という意味ではなく、海や山、高原などで自然を楽しむことを指しています。「自然界隈」は、SHIBUYA109 lab.が発表したトレンド予測2024でモノ・コト部門でランクインしています。流行にはコロナ禍から始まったアウトドアブーム、キャンプブームなども一役買っていると思いますが、やはりSNSやTikTokなどのショート動画の役割が大きいでしょう。きれいな自然の様子や、アウトドアファッションを「#自然界隈」としてアップする若者が多いようです。
例5:
A:「見て見て! 私の自然界隈コーデ、“いいね”がたくさんついてる!」
B:「あんた、ずっと家でゲームばっかしてて、キャンプとか行ったことないじゃん。」
・伊能忠敬界隈
最もひねりの効いた「界隈」です。これは「伊能忠敬のファンです」というわけではなく、日本中を歩いて日本地図を作成した伊能忠敬にちなみ、「長距離を歩く人たち」のことを指します。「長距離歩行界隈」や「健脚界隈」などではなく、伊能忠敬というところにセンスが感じられます。
例6:
A:「今年の100キロウォーク、挑戦してみようよ!」
B:「俺は伊能忠敬界隈だから全然イケるけど、お前、運動キャンセル界隈だろ? 大丈夫?」
★使い方の注意
以上のように、「界隈」にはいろいろな意味があります。本来の意味では読解問題などで出てくることもあると思いますので、文脈によって適切な意味を説明できるようにしておくことが大切です。また、「風呂キャンセル界隈」で書いたように、不用意に使うと人を傷つけてしまう場合があるので注意が必要です。
確かに、「長距離を歩くことが好きな人たちの間では……」というより「伊能忠敬界隈では……」と言ったほうが、意味を知っている人たちの間では早く正確に意味が伝わります。このような利便性が流行語の本質かもしれませんね。日本教育界隈の皆さんはどの「界隈」が気になるでしょうか?




