
令和6年(2024年)4月1日に施行された「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(以下、日本語教育機関認定法)」に基づき、日本語教育機関に関して、適正な教育が実施されているかどうかを審査・認定する「日本語教育機関の認定制度」が始まりました。将来的には、この制度で認定された機関だけが「認定日本語教育機関」を名乗ることができるようになります。日本語教師の働き方やキャリア、教える学校の選択などにも大きく関わるこの制度について大切なポイントを押さえておきましょう。
認定日本語教育機関とは?
2024年、「日本語教育機関認定法」が施行されました。この法律は、日本語を学ぼうとする外国人が適正かつ必要な日本語教育を受けられるよう、教育機関や教員について一定の水準を設け、日本語教育の質を確保、向上させることによって日本語教育の環境を整えることを目的としています。この法律に基づいて、「認定日本語教育機関認定基準」が定められ、日本語教育機関の適切性を文部科学大臣が審査し、認定する「日本語教育機関の認定制度」が設立されました。
この制度は、外国人などが日本語を学ぶための教育を実施する機関が一定の要件を満たすことによって認定を受けるもので、認定された機関は「認定日本語教育機関」と呼ばれます。2024年4月から申請受付が始まり、2025年11月現在、64機関が認定を受けています。
文部科学大臣から認定を受けた機関
「認定日本語教育機関」は、カリキュラムや教員の資格、教育体制、施設設備、財務状況などを、上記にもあるように文部科学大臣が審査し、一定の要件を満たしていると認められた機関のことです。認定された機関だけが「認定日本語教育機関」を名乗ることができ、それ以外の機関が、これと紛らわしい名称を名乗ることはできません。
認定日本語教育機関の制度ができた背景と目的

この制度ができた背景には、日本国内には多くの日本語教育機関が存在する中、一部、教育機関として十分な設備を備えていなかったり、日本語指導をするために必要な知識・技能を十分に持たない教師が教えていたりするなど、日本語教育機関としての質の担保がなされていない状況が問題視されるようになったことがありました。
また、外国人が日本語を学ぶ教育機関を選ぼうとするとき、学習環境が整った機関であるのかどうか十分な情報を得るのが難しいという現状、さらに企業においては外国人材の受け入れニーズが高いものの、日本語教育のノウハウや教育に当たれる人材が不足しており、それらを担う適切な日本語教育機関や教師の育成・充実が急務となっているという状況もありました。
「日本語教育機関の認定制度」は、こうした課題を解決すべく、日本語教育機関の適切性を文部科学大臣が認定することによって、日本語を学ぶ意欲や必要のある外国人が、適正な日本語教育を受けることができるよう、環境を整えることを目的に設立されたのです。
「法務省告示機関」との違いは?

「認定日本語教育機関」とは別に、現在、「留学」の在留資格で日本に入国する外国人に対する日本語教育を担う日本語教育機関(主に日本語学校など)に関しては「法務省告示機関」と呼ばれる制度があります。この制度とどのような違いがあるのでしょうか。
「法務省告示機関」は、法務省の出入国在留管理庁(入管庁)が定める「日本語教育機関の告示基準」によって、施設設備や編制、運営状況などが基準に適合しているかどうかの確認が行われ、基準を満たしていると認められた機関のことをいいます。いわゆる「告示校」と呼ばれる教育機関で、令和5年2月点では833校となっています。
しかし、告示基準は、あくまでも入管法の目的である在留の公正な管理ができているかの基準であり、日本語教育の質を確保するために必要な教育課程や教員資格までは担保されていない点が問題として挙げられるようになりました。
さらに、告示制度は、「留学」の在留資格で入国する外国人を受け入れる日本語教育機関だけを対象としていて、就労目的の在留資格や「家族」「定住者」などの在留資格で日本に滞在する外国人の日本語教育を担う機関までは想定されていません。
そこで、日本で就労する人や生活する人も対象に含め、日本語教育の質を確保し、適正に実施できている教育機関かどうかを文部科学大臣が審査・認定することになったのです。
現在、告示校として認められている機関も、継続して「留学」の在留資格を持つ留学生を受け入れようとする場合、2029年3月末までに新たに「認定日本語教育機関」の認定を受ける必要があります。
認定日本語教育機関の分野は「留学」「就労」「生活」の3分野
文部科学大臣によって認定される「認定日本語教育機関」は「留学」のほかに「就労」「生活」の分野が設けられ、3つに分けられることになりました。いずれも対象と学習目的にあわせ、教育理念に沿ったカリキュラムになっているか、登録日本語教員の資格を持つ教師が適切な授業を行っているか、などの項目によって厳しく審査が行われるのは変わりませんが、細かい部分で、以下のような違いがあります。
まず修業年限を見ると、留学は原則1年以上ですが、就労・生活は各目的に応じて適切に定めるとされており、比較的、柔軟な設定が認められています。また、目標とする日本語レベルは、「日本語教育の参照枠」でいうと、留学はB2以上、就労・生活はB1以上を目標とする課程を設けることが求められています。
授業時間も留学の場合は年間760単位時間以上ですが、就労・生活の場合はB1目標の課程で350時間以上、A2で200時間、A1で100時間となっています。その他、就労・生活ではオンライン授業も認められているなどの違いが見られます。
認定に必要な条件
では、「認定日本語教育機関」として認定を受けるためには、どのような条件をクリアすればよいのでしょうか。項目別に見ていきましょう。
十分な教育内容と教師の質が確保されているかどうか

まず、しっかりとした教育内容が担保され、教師の質が十分であることが求められます。具体的には、次のような条件をクリアする必要があります。
- 学校ごとに教育理念を定め、「生活のための日本語」「就労のための日本語」など目的に合ったカリキュラムが作成されている。
- 教員は「登録日本語教員」資格を持ち、主任教員を中心に授業の質が管理されている。
- 例えば、就労課程では「職場での日本語表現」「報告書の書き方」など実務に直結する授業が設計されている。
安全で学びやすい施設と運営体制が整っているかどうか

施設の環境、運営体制については、次のような条件を満たすことが求められています。
- 教室や職員室、面談室などを十分な広さで設置し、駅からのアクセスを示す略図を提出する。
- 火災や災害に備えて避難経路を明記し、緊急時には他校と連携して授業を継続できるように協定を締結する。
- 校長・事務職員・生活指導員が明確な役割分担を持つ。
安定した経営体制、学生支援体制が整っているかどうか

経営体制および、学生の支援体制に関しては、次のような条件を満たすよう、定められています。
情報公開とコンプライアンスはしっかりなされているかどうか
情報公開とコンプライアンスに関しては、次のような条件を満たすよう、定められています。
- 学校の名称、所在地、課程、授業料、修了要件などを日本語と英語でウェブサイトに掲載する。
- 年次報告書を提出し、変更(校舎移転や教員交代など)は文部科学省へ届け出をする。
こうした条件をクリアし、認定を受けた機関は「認定日本語教育機関」を称することができます。なお、認定を受けた機関の情報は、文部科学省ポータルサイトで公開されています。
日本語教師を目指す人が知っておくべきこと、求められること

「日本語教育機関の認定制度」は、日本社会で暮らす外国人に対し、必要かつ十分な日本語教育を提供できるよう、日本語教育の質の確保と向上を目的に定められた制度です。これを踏まえ、これから日本語教師を目指す方が知っておくべきことは何か、押さえておきましょう。
登録日本語教員の資格が必須
「認定日本語教育機関」で教えるためには、国家資格「登録日本語教員」を取得していることが必須になりました。ただし、2029年3月末までの移行期間があり、現職者や大学などで日本語教育を専攻した人、日本語教育能力検定試験合格者(令和5年度試験まで)などは一部の試験免除などの措置がありますが、将来的には全ての教員に必須の資格となります。「認定日本語教育機関」で教えようと考える人は「登録日本語教員」の資格の取得をしておくことを勧めます。なお、認定機関以外であれば資格がなくても教えることは可能です。
登録日本語教員になるには
登録日本語教員の資格を取得するための日本語教員試験は、2025年12月現在、毎年11月に実施されています。日本語教員試験の出題範囲は、文化庁が日本語教師の養成における教育内容として示した「必須の教育内容」に準じたものになります。日本語教員試験に対応する教材もありますから、こうした教材を活用し、必要な知識を身につけて試験に臨みましょう。
まとめ
「日本語教育機関の認定制度」は、日本で暮らす外国人が、生活に必要な日本語を理解し使用する能力を十分身につけられないことによって、日本社会から疎外されることがないよう、日本語教育機関および教員の質に関して一定水準を確保することを大きな目的として設立された制度だといえます。日本語教育の充実は、日本社会を支える担い手として、今後、ますます増えると予測される外国人との共生社会を実現するためにも不可欠な要素であることは間違いないでしょう。
これまで過去3回行われた認定状況を見ると、194機関の申請に対し64機関が認定されています。こうした数字を見る限り、日本語教育機関の認定を受けるのはハードルが高いように思えます。しかし、制度の意義をあらためて考えたとき、認定を受けることは、日本語教育機関としての適正性を示すことができるとともに、共生社会の実現の一翼を担う機関として重要な役割を持つことにもなります。
一方で、日本語教育に携わる者としては、まずは必要な知識を身につけ、登録日本語教員の資格を取得しておくことが大切だといえるでしょう。それにより、結果的に、自分が教えたい教育機関の選択の幅を広げることにもつながるといえます。
【参考】
日本語教育機関の認定制度の創設等
https://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/kekka/1421037_00012.htm
留学のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について
https://www.mext.go.jp/content/20250117-mxt_nihongo01-000034783_01.pdf
就労・生活のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について
https://www.mext.go.jp/content/20250117-mxt_nihongo01-000034783_02.pdf
留学のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について(文化庁)
https://www.mext.go.jp/content/20240322-ope_dev02-000034835_1.pdf
日本語教育機関認定法 よくある質問集
https://www.mext.go.jp/content/20240402-ope_dev02-000034833_1.pdf
認定日本語教育機関の認定申請等の手引き
https://www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/1246441_00009.html
認定日本語教育機関の認定等に関すること
https://www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/mext_02666.html
認定日本語教育機関の認定申請等の手引き【令和7年5月28日公開版】
https://www.mext.go.jp/content/20250528-mxt_nihongo01-000039537_1.pdf
認定日本語教育機関案内(認定を受けた機関)
https://www.nihongokyouiku.mext.go.jp/top/guide-japanese-language-institution




