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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

あいまいな日本語 ー「までに」はいつまで?

皆さんは学習者から「日本語はあいまいだ!」と言われたことはないでしょうか。日本語があいまいかどうかは一概には言えませんが、中には学習者が言うように「あいまいな言葉」もあるかもしれません。ここでは、学習者はもちろん、日本人も頭を悩ませそうな「あいまいな言葉」を挙げてみます。 

水曜日までに」は、いつまでか? 

上司:このデータ、来週の水曜日までに送っておいてね。 

部下:承知しました。 

部下は、このデータをいつ上司に送ればいいでしょうか? 

実は日本人でも、人によって受け取り方が違うようです。水曜日中に送ればいいと思う人もいれば、水曜日には上司の手元に届いていなければならないという解釈もあり得ます。当然、この場合も上司と部下とで捉え方が違っている可能性もあります。 

「〇〇までに」は、〇〇を含むというのが一般的な解釈ではあるようですが、こんな場合は、「確認を取る」ことで余計なトラブルを避けることができます。 

上司:このデータ、来週の水曜日までに送っておいてね。 

部下:承知しました。水曜日の午前中までにお送りすればよろしいでしょうか? 

もっとも「できる部下」なら、月曜日までにデータを送っておいて、涼しい顔をしているかもしれませんが。 

「2日おき」の、次はいつか? 

上司:支社からのデータは2日おきに来るから、チェックしておいてね。 

新入社員:承知しました。 

新入社員は、次はいつデータをチェックすればいいでしょうか? 

例えば今日が1日だとすると、データは「2日おいて4日に来る」という解釈もあれば、「2日後の3日に来る」という解釈もあり得ます。 

また、これは「〇〇おき」の「〇〇」に何が来るかによっても、受け取り方が微妙に違ってくるようです。「2日おき」ではなく「1日おき」「3時間おき」「1分おき」と、どんどん〇〇の範囲を狭めていくと、「3時間ごと(3時間に1回)」「1分ごと(1分に1回)」と解釈する人が増えていくようです。 

これも「確認をとる」のが無難のようですね。 

上司:支社からのデータは2日おきに来るから、チェックしておいてね。 

新入社員:承知しました。今日は1日ですから、次にデータが来るのは4日ですね 

明治時代より前」は、明治時代は含むのか? 

上司:うちの会社の創業は明治時代より前なんだよ。 

部下:へー、すごいですね。 

この会社は、いつ創業されたのでしょうか。 

「明治時代より前」は、「明治時代を含む」という解釈と「明治時代は含まない(つまり江戸時代)」という解釈が成り立ちます。これも、「明治時代」ではなく「2000年より前」「3月より前」「15日より前」と、「〇〇より前」の〇〇の範囲をどんどん狭めていくと、「~1999年」「~2月」「~14日」と解釈する人が増えていくのではないでしょうか。 

ちなみに聞き手が確認を取るばかりでなく、話し手の方で「言い方を変える」「具体的に示す」ことで、余計な誤解を避けることもできます。 

上司:このデータ、来週の水曜日の朝9時までに送っておいてね。 

上司:支社からのデータは2日おき、次は4日に来るから、チェックしておいてね。 

上司:うちの会社の創業は明治時代より前の慶応元年なんだよ。 

聞き手と話し手がお互いに工夫することで、誤解を避けたコミュニケーションを心がけたいものです。 

参考:NHK放送文化研究所「ことばの研究」 
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/ 

執筆:新城宏治 

株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。