
「日本語教師になりたい。でも、仕事をしながらでも学べるのだろうか」と考えている人もいるでしょう。日本語教師になるには、大学で日本語教育を専攻する方法の他に、民間の養成講座で学ぶ方法や、独学+通学でなる方法もあります。そして、養成講座などで学ぶ人の多くは、働いている、あるいは働いたことがある社会人です。今回は、働きながら日本語教師を目指す方法、かかる時間などについて解説します。
日本語教師養成講座は働きながらでも修了できる?
日本語教師を養成する機関には、大学などの養成課程のほか、民間の日本語教師養成講座があります。後述しますが、2024年度から日本語教師は国家資格となり、「登録日本語教員」と呼ばれるようになりました。それに伴い、国家資格を得るためには、国によって「登録日本語教員養成機関」「登録実践研修機関」の認定を受けた講座で受講することが求められることになりました。したがって、この記事では以下、養成講座のことを「日本語教員養成機関(または養成機関)」と記すことにします。
受講生の多くは社会人——幅広い年齢層が受講
民間の養成機関では、どのような人が学んでいるのでしょうか。文部科学省による調査「令和6年度 日本語教員養成課程・実践研修実態調査業務 報告書」(令和7年3月公表、p.56)によると、受講者(1104人)の年齢構成は50代が24.9%と最も多く、以下、40代20.6%、30代19.7%、20代17.8%、60代14.6%などとなっています。20代から60代までの幅広い年齢層の人が満遍なく在籍していることがわかります。
では、受講生のバックグラウンドはどうでしょうか。大手の養成機関などのサイトで、体験談が紹介されているのを見ると、セカンドキャリアとして日本語教師を目指す人、キャリアチェンジを考える会社員、子育てや介護を終えた主婦などが受講していることが多いことが見てとれます。これは文科省による年齢層の調査とも符号します。
修了までの期間は半年から1年半が目安
受講を始めてから修了まで、時間はどれぐらいかかるのでしょうか。国家資格化に伴い、養成機関で学ぶべき内容として「50項目の必須の教育内容」および、専門家としての日本語教師に求められる資質・能力を身につけるための教育目標として「養成課程コアカリキュラム」が公表されました。認定を受けた養成機関では、これに基づいてカリキュラムが制定されています。具体的な時間数は、養成課程は375単位時間以上、さらに実践研修も一体的に行われる場合は420単位時間以上となります。
「50項目の必須の教育内容」を見るとわかるように、学ぶべき内容は幅広く、これだけの知識を身につけるためには相応の時間はかかります。通学頻度やコースなどによっても異なりますが、半年から1年半が目安といえるでしょう。
例えば、通学制で週5日、日中の時間帯に集中して学ぶコースであれば半年程度、夜間の時間帯に週2、3日通学するコースであれば1年〜1年半程度、通学と通信併用でじっくり学ぶ場合であれば1年半程度など、受講頻度や通学・通信などのコースの違いによって幅があることを理解した上で、自分の生活ペースに合わせた学び方を選ぶことが大切です。
「登録日本語教員」の基礎知識
さて、最初に日本語教師の資格は2024年度から国家資格になったと説明しました。あらためて、どのような制度なのか、確認しておきましょう。
登録日本語教員とは?
2024年4月、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(日本語教育機関認定法)」という法律が施行されました。この法律によって、日本語教育機関は、在留資格「留学」の学生を受け入れるためには、文部科学大臣による「認定日本語教育機関」の認定を受けることが求められるようになりました。そして、この「認定日本語教育機関」で教える教師には「登録日本語教員」という国家資格が求められるようになったのです。なお、登録日本語教員になるために学歴、年齢、母語、国籍は問われません。
資格取得するための2つのルート——「養成機関ルート」と「試験ルート」
これから登録日本語教員になろうとする場合、2つのルートがあります。1つは「養成機関ルート」、もう1つが「試験ルート」です。なお、両ルートとも「日本語教員試験(基礎試験・応用試験)」「実践研修」が課されますが、「養成機関ルート」では受講内容によって免除されるものがあります。以下、ルート別に見てみましょう。
養成機関ルート
まず、「養成機関ルート」は、大学の養成課程や民間の養成機関を経て資格取得を目指すルートです。このルートでは、「登録日本語教員養成機関」の認定を受けた講座で受講した場合、日本語教員試験のうち、「基礎試験」が免除され、「応用試験」のみが課されます。合格後は、「登録実践研修機関」の認定を受けた教育機関で「実践研修」を受けることが必要です。「登録日本語教員養成機関」と「登録実践研修機関」が一体化したコースとなっている機関もあります。
養成機関を経て資格取得を目指す場合、合格のハードルが高いと言われる「基礎試験」が免除されること、講師に質問をしやすいこと、一緒に学ぶ仲間がいることによって情報が得やすかったり、モチベーションの維持がしやすかったりすることが利点といえそうです。ただし、受講するには一定の受講料がかかります。
試験ルート
一方、「試験ルート」は、養成機関を経ず、独学などで資格取得を目指すルートになります。日本語教員試験の「基礎試験」と「応用試験」を受験・合格することが求められ(基礎試験と応用試験は同日に行われます)、合格後は「登録実践研修機関」の認定を受けた教育機関で「実践研修」を受けることが必要になります。
学習にかかる期間としては、日本語教員試験の合格を目指すのに半年~1年程度。その後、実践研修に必要な期間は2か月~となっています。
メリットとしては養成機関ルートに比べて金銭的負担が軽い点、自分のペースで学習を進められる点などが挙げられるでしょう。基礎試験、応用試験のどちらにも合格し、合格後は研修のための時間が必要になるといった点、また自分の自由な時間に勉強ができる反面、モチベーションを強く持ち続けなければならない側面があるといえます。
(参考)「現職者以外の人が登録日本語教員を目指す場合」(文部科学省)
働きながら資格取得を目指す場合のスケジュール例
資格取得までのルートや、かかる時間の目安などが確認できたので、ここからは働きながら資格取得を目指す場合のスケジュールについて考えてみます。
eラーニング+通学型
社会人が受講しやすいパターンとして考えられるのが、通学制の授業とeラーニング授業を組み合わせた学び方です。スケジュールの一例を紹介しましょう。
理論科目375時間のうち、主に知識を身につける科目(280〜300時間程度)をビデオ録画などを見て学ぶオンデマンドで受講し、インタラクティブなやり取りが効果的な科目・内容の授業(75〜95時間程度)を通学で学ぶコースを受講するとしましょう。受講時間は自分の生活パターンに合わせて設定できますが、1週間10時間受講とした場合、半年から9カ月ほどかかります。その後、実践研修45時間を通学受講する場合、約2〜3カ月が目安になるでしょう。あわせると、修了までにかかる期間は1年程度が目安となります。
なお、オンデマンドで学べる内容や時間数は養成機関によって異なります。また、通信制講座の場合、スクーリング(一部の授業を登校して受講する)があることもあります。自分の生活スタイルにあうスケジュールかどうか、受講前に確認するとよいでしょう。
夜間・土日通学型
社会人が受講しやすいパターンとして、退勤後の時間に通学する「夜間通学型」や、土日などの休日に通学する「土日通学型」があります。eラーニングと違って、決まった時間に学校に体を運ばなければなりませんが、行ってしまえば志を同じくする仲間もいてモチベーションを保ちやすい側面もあります。
授業時間は、夜間もしくは土日の限られた時間になるため、1日2~6時間程度ということが多いようです。週1回、土曜日に通学し、1日6時間(午前3時間、午後3時間)受講する場合であれば、375時間を修了するのに約1年3カ月、実践研修が2〜3カ月かかるとすると、全体で1年半ほどが目安になるでしょう。
試験ルート(独学)
「試験ルート」の場合、まず目標は日本語教員試験の合格になるので、それに向けてスケジュールを考える必要があるでしょう。日本語教員試験は11月上旬に実施されるため、そこから逆算して準備を始めましょう。既有知識にもよりますが、半年〜9カ月前ぐらいから勉強をスタートし、自宅のほかにカフェ、図書館などを使ったり、通勤時間や昼休みも利用して勉強を進める人が多いようです。
最初にすべきことは、現状の既有知識の確認と苦手分野の把握です。なぜならば、日本語教員試験のうち、基礎試験では、5つある出題分野すべてで6割程度の得点が求められているからです。まず、市販の問題集を1冊通して解いてみましょう。苦手分野がわかったら知識を補強していきます。
効率的に学習を進めるために、試験形式も早めに確認しておく必要があります。過去問題は公開されていませんが、文部科学省のサイトでサンプル問題を閲覧できます。
具体的に学習を進めていくにあたっては、各分野の専門書で学ぶ方法もありますが、「養成課程コアカリキュラムにおける必須の教育内容」を網羅した内容で、講義を聞くように読むことができる「アルク日本語教員養成セット」のような教材セットを活用する方法もあります。
セットではなく、各分野の専門書で学ぶ場合も、用語集も1冊用意して、わからないこと、あやふやなことが出てきたときに確認することで、記憶に残りやすくなります。
働きながら独学で学習の体験談は以下より読むことができます。
まとめ
仕事をしながら資格取得の勉強をするのは、学習時間の捻出・確保、体力的な問題などもあって大変なことではあります。しかし、多くの社会人が自分なりのペースで工夫して学んでいます。また、そうしたニーズに応える受講コースを提供している養成機関や教材も数多くあります。自分に合う学び方のスタイルを見つけやすくなっていますから、まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。




