
皆さんは学習者から「日本語はややこしい!」と言われたことはないでしょうか。日本語がややこしいかどうかは一概には言えませんが、中には学習者が言うように「ややこしい表現」があるかもしれません。ここでは、学習者はもちろん、日本人も頭を悩ませそうな「ややこしい表現」を挙げてみます。
「結構です」は承諾? 拒否?
店員:ご注文は以上でよろしいですか?
客:結構です。
店員:食後にコーヒーはいかがですか?
客:結構です。
最初の「結構です」は承諾、後の「結構です」は拒否を表していますが、同じ「結構です」で反対の機能を表しているので、非常にややこしいです。店員が客の意向を取り違えてしまったら、トラブルの元ですね。
文字だけ見ると区別が付きませんが、言葉を少し補ったり、イントネーションやジェスチャーなどを組み合わせたりすると、意図が通じやすくなります。例えば、「はい、結構です」と言えば承諾の意味になりますし、首を横に振りながら「結構です」と言えば、拒否の意味になるでしょう。
これは「いいです」も同様です。「いいです」だけでは承諾か拒否か分かりませんが、頭に「はい」「いいえ」を付けると分かりやすくなります。
店員:ご注文は以上でよろしいですか?
客:はい、いいです。
店員:食後にコーヒーはいかがですか?
客:いいえ、いいです。(更に首を横に振る)
「すみません」は謝罪? 感謝?
店員:すみません、お酒が一杯分ないので、半額におまけしておきます。
客:いつも、すみません。
居酒屋でよく見られる光景です。一升瓶に一杯分のお酒が残っていなかったんですね。
最初の「すみません」は謝罪、後の「すみません」は感謝を表しているので、非常にややこしいです。日本語では、あまり違和感はありませんが、学習者によっては、感謝の意味で謝罪の言葉を使うのは、「なぜ?」と思うかもしれません。
「すみません」は、謝罪や感謝以外にも、呼びかけなどいろいろな場面で使える便利な表現ですが、代わりの表現も使えるようにしておくといいと思います。
店員:申し訳ありません、お酒が一杯分ないので、半額におまけしておきます。
客:いつも、ありがとう。
「大丈夫です」は、本当に大丈夫?
店員:お客様、体調が悪そうですが……
客:大丈夫です。
店員:お水をお持ちしましょうか?
客:大丈夫です。
居酒屋で飲み過ぎてしまったのかもしれません。ちょっと心配ですね。
最初の「大丈夫です」は「元気です」、後の「大丈夫です」は「要りません」の意味になります。これも同じ「大丈夫です」が違う意味になります。ややこしいですが、この場合は、文脈によって違いを判断できるかもしれません。
更に言葉を少し補えば、意図が通じやすくなるでしょう。
店員:お客様、体調が悪そうですが……
客:いえ、大丈夫です。
店員:お水をお持ちしましょうか?
客:ありがとうございます。でも、大丈夫です。
言葉だけを取り出すといろいろな解釈の可能性が考えられますが、言葉を補う、別の言葉に置き換えるといったことはもちろん、イントネーションなどのパラ言語、ジェスチャーなどの非言語行動など、さまざまな手段を用いて日々のコミュニケーションは行われています。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。高崎健康福祉大学非常勤講師。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。




