
多くの日本語学校、また開校予定の日本語学校が認定日本語教育機関になることを目指して準備をしていると思います。しかし、過去3回の認定率を見ると、令和6年度1回目は30.6%、令和6年度2回目は39.6%、令和7年度1回目は31.1%(いずれも小数点第二位を四捨五入)となっていて、認定日本語教育機関になるのはなかなか難しいものと言えます。この記事では、あらためて、認定日本語教育機関とはどうあるべきかについて、そしてそれを考える際のバックワード・デザインについて見ていきたいと思います。最後にバックワード・デザインをテーマにしたセミナーのご案内もしていますので是非ご確認ください。(金子史朗・鎌田亜紀子/友国際文化学院)
認定日本語教育機関申請の鬼門
申請には多くの書類を準備しなければならないのですが、教務の先生を悩ませるのが様式10‐1と様式10‐2ではないかと思います。様式10‐1は、日本語教育課程の概要を書くもので、設置目的と経緯、主たる対象とする学習者、教育課程の到達目標、修業期間と学習時間、成績のつけ方や修了の要件等を書きます。また、その課程(2年課程、1年6か月課程など)をどのようにレベル分けするか、そしてそれぞれのレベルの到達目標や学習時間を書くことになっています。
様式10‐2は、教育課程の中身をさらに詳しく書くものになります。具体的にどのような科目名の授業をするのかを示し、その到達目標、学習時間数、評価の方法、具体的な学習の内容や方法、教材等をレベル毎に書き記して、1枚の表にするものです。
この2つの書類は、まさにその学校の教育そのものを示すものであり、最も重要なものと言えるでしょう。それだけに作成にあたっては多くの時間と労力が必要とされ、審査においても慎重に測られるのだろうと思います。
既存校が抱える難しさ
認定率が低いレベルで推移していることは上述しましたが、とりわけ、現在法務省告示校として運営されている「既存校」の認定率が低い(過去3回の平均が28.2%)ことについて考えてみます。
新しく学校を開く新規校と違い、既存校はこれまで走らせているカリキュラムがあるので、それを基に考えていくということがあると思います。それ自体が悪いとは思いませんが、多くの告示校は、「日本語教育の参照枠」以前の考え方でカリキュラムを作っていると思われるので、認定日本語教育機関で求められるカリキュラム編成の発想とは根本から相違があり、それを無理やりつなげようとするところに困難が生じるのではないかと思います。
それでは、ということでメインの教科書を行動中心アプローチのものに変更するという学校もあるようですが、教科書を変えれば解決するとも思えません。そこで、あらためて認定日本語教育機関とはどうあるべきかについて考えてみましょう。
学校にとって最も大事なこと
認定日本語教育機関にとって最も大事なことは何でしょうか? 「日本語教育の参照枠」でしょうか。Can‐doでしょうか。私は、その学校の教育理念と教育目標だと考えています。どのような理念をもって学校を作るのか、その理念のもとにどのような教育目標を掲げるのか、ということです。教育目標は、その学校が育てたい人材像であり、それを明確にすることが第一なのではないかと思います。そして、そういった人材は何ができるのか、を言語化することが様式10‐1の「教育課程の到達目標」にここから考えていくのがいいのではないかと思います。
「目標」の次に考えること
「到達目標」を設定した次に考えることは、その目標に到達したかどうかをどのように測るか、つまり「評価」について考えることです。ここでは、筆記テスト、作文や会話などのパフォーマンステスト、成果物評価などの方法だけでなく、形成的評価を行うのか総括的評価として行うのかなど、その目的に照らして適切な方法を選び実施することが求められるでしょう。
認定日本語教育機関の審査においては、各レベルで設定した目標(様式10‐2では「学習目標」となっています)をクリアしたかどうかを適正に判定できるものになっているかどうかが問われるので、それぞれの授業科目で妥当性と信頼性のある方法を選択する必要があります。そして、選定した方法によって評価をする際、きちんと学習者の実力が出るような授業を設計していくことになります。そこでは、授業をどのように進め、どのような活動をしていくのか、そのためにはどんな教材が適しているのか、その教材をどのように使っていくのか、など授業全体のデザインを考えていくことになります。
このような考えでいくと、教材は最後の選択になります。「教科書を変えれば解決するとも思えない」と上述した理由はここにあります。
また、多くの既存校がぶちあたる壁はこの辺りになるのではないかと考えています。つまり、今あるやり方、あるいはマイナーチェンジしたやり方に「参照枠」をあてはめていくという発想だと、どこかで「うまくはまらない」というような事態が起きがちなのではないかと思います。もちろんそれを乗り越えることができた学校もあるので、その進め方を否定することはしませんが、私は、バックワード・デザインのカリキュラム編成をおススメしたいと思います。
あらためてバックワード・デザインとは
「逆向き設計」とも呼ばれるバックワード・デザインですが、最初にするのは「目標」を定めることです。ただ、「目標」を定めること自体は、バックワード・デザインを意識しなくても日常的に行っているのではないかと思うので、取り立てて注意することではないと思います。問題はその次で、ここにくるのが「目標を達成したかを測る評価方法」を設定することです。評価方法の設定の前授業の内容や方法を持ってくることがあるのですが、そうすると、「評価」が授業でやったことをもとにしたものになってしまい、それが「目標」の達成を測るものとずれてしまうようなことがあると、適切な評価とは言えなくなってしまう恐れがあります。
特に認定日本語教育機関のカリキュラムにおいては、目標を具体的な言語能力記述文(Can‐do)の形で表すことが必須とされているので、それが達成したと言える測定方法を常に念頭に置き、授業を考えるという発想が必要ではないかと思います。

このように「目標」→「評価」→「授業内容・方法」という順番で設計していくのがバックワード・デザインということになります。実は様式10‐2の表も上から「学習目標」「学習成果の評価・成績」「学習時間」「授業科目の内容」「教材等」となっていてバックワード・デザインの順番になっています。このことを見ても、カリキュラムを考える際は、バックワード・デザインで考えてみることをお勧めいたします。
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※それぞれお申込みください。
▼講師
金子史朗・鎌田亜紀子/友国際文化学院
▼形式
オンライン(ZOOM)
▼対象
・認定申請のご担当者
・日本語教育に携わる方
▼参加費
無料
金子史朗
友国際文化学院、校長。大学卒業後、日本語教師養成講座に通い、1992年から非常勤講師として日本語教師の仕事を始める。以来、国内外の日本語学校、日本語教師養成講座で非常勤講師、専任講師、教務主任を経て、2022年から現職。また、国立国語研究所の非常勤研究員や日本語教育学会、日本語教育振興協会での委員も経験。著書に『マンガで学ぶ日本語会話術(共著)』(アルク)、『チャレンジ日本語〈聴読解〉(共著)』(国書刊行会)、『日本語授業の進め方生中継』(アルク)がある。学生時代はボート部員。
鎌田亜紀子
友国際文化学院、教務主任。大学で地理学を専攻後、養成講座を経て日本語教師の道へ。2003年から教壇に立ち、2014年には友国際文化学院の立ち上げに参画。3度の産休・育休を経験し、現在は教務主任として、日々楽しみながらカリキュラムや評価、授業改善に取り組んでいる。趣味は観察・分析・分類。対象を見つけるために、怪しまれない程度に日々キョロキョロしている。



