
政府は2026年1月23日に、外国人政策についての関係閣僚会議を開き、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(以下、「対応策」)」を取りまとめました。この関係閣僚会議は8年前から継続的に開かれているものですが、2025年の参議院選挙で外国人政策が大きくクローズアップされたこともあり、「対応策」への注目度が高まっていました。
「対応策」の背景と基本的な考え方
「対応策」の背景にあるのは、言うまでもなく在留外国人の増加と多国籍化です。
直近の数値では、在留外国人数は395万人超(2025年6月末時点)、出身国・地域は196か国・地域となっています。また、インバウンドによる観光客も毎年増加しています。
このような現状に対して「対応策」では、外国人の増加に伴う国民の関心が高まる一方、「一部の外国人による、我が国の法やルールを逸脱する行為・制度の不適正利用について、国民が感じている不安や不公平感に対処する必要」があり、「入国前の日本語教育及び社会規範等の理解促進」や、制度の適正化などにより、「(日本)国民と外国人の双方が安全・安心に生活し、共に繁栄する社会の実現を目指す必要」があると、基本的な考え方をまとめています。
日本語教育について何が書かれているか
日本語教育については、「対応策」の「Ⅱ 国民の安全・安心のための取組」の中で主に書かれています。
まず「1 出入国・在留管理等の適正化・外国人受入れについて」の中では、具体化に向けて直ちに着手することとして、「日本語や制度・ルール等を学習するプログラムを創設」し、さらに「当該プログラムを受講の上、内容を理解していることを在留審査における考慮要素とすることについて、検討」するとしています。
また、「2 外国人制度の適正化等について」では、「来日前・来日後の日本語教育の充実(大人:自治体への財政支援等/こども:国が初期支援の方策を検討等)」、そして、「日本語教師の養成・研修及び社会的地位の向上」が挙げられています。
詳細を見ていきます。
日本語や日本の制度等を学習するプログラム
冒頭の基本的な考え方でも触れているように、一部の外国人に法やルールに対する理解が十分ではないケースがあるという課題意識から、日本語や日本の制度等を学習できるプログラムの創設が検討されています。
「対応策」では、「日本に在留する外国人(帯同家族を含む)が、日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムを創設し、さらに当該プログラムを受講の上、内容を理解していることを在留審査における考慮要素とすることについて検討する」としています。
プログラムの受講と内容理解が在留審査の関わるということであれば、その拘束力はかなり強いものになると思われます。ただし、「ルール」というのは、指す範囲が幅広く、文化的な要素が含まれる可能性もあるため、内容については慎重な検討が必要だと思われます。
来日前・来日後の日本語教育の充実
「対応策」では「日本語教育の充実」として、対象別に具体的な取り組みが羅列されています。
・来日前の日本語教育
育成就労制度の開始に向け、現地における日本語教育カリキュラム・教材開発支援、日本語教師の育成等、海外の日本語教育活動を支援
・大人(労働者)に対する日本語教育
育成就労制度における日本語講習モデルカリキュラムの開発・普及促進
監理支援機関や育成就労実施者において認定日本語教育機関や登録日本語教員による日本語講習が円滑に行われるよう運用
・大人(生活者)に対する日本語教育
オンライン日本語学習教材の充実、地方公共団体による地域日本語教育の総合的な体制づくりへの財政支援の拡充
地域日本語教育に関するガイドラインの作成等を検討
・子供に対する日本語教育
「プレスクール(仮称)」(初期支援)の方策の検討、ICTや生成AIの活用も含めた指導内容・方法等のガイドラインの提示、日本語指導補助者等への支援の拡充、地方公共団体への財政支援等の拡充
JFT-Basicは育成就労制度にも対応
新しい情報として、「対応策」の中に「JFT-Basicは令和8年8月を目途に、育成就労制度に対応する」との文言がありました。
JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)は、現在、特定技能1号に対応し、CEFRのA2レベルの日本語力を測るテストとして受験者が増加していますが、これを新しく創設される育成就労制度にも活用するとのことです。育成就労の日本語力はA1レベルであることから、JFT-Basicはレベルが二つに分かれることになるのだと思います。
なお、特定技能と育成就労を合わせた外国人の受け入れについては、123万人を上限とすることが閣議決定されているため、今後、JFT-Basicの受験者はかなりの数に上る可能性があります。
日本語教師の養成・研修及び社会的地位の向上
前述の、「在留する外国人(帯同家族を含む)が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するためのプログラム」については、「認定日本語教育機関や登録日本語教員の活用方策の検討」とされ、合わせて「登録日本語教員の処遇改善の推進」が謳われています。
ここまで見てきたように、「対応策」の全体を通して、「認定日本語教育機関」や「登録日本語教員」の活用が幅広く挙げられています。
今後、「登録日本語教員」の活躍の場はますます広がっていくことが期待されます。合わせて、これだけの社会的要請に見合うだけの、「認定日本語教育機関」や「登録日本語教員」の質と量の確保が、引き続き大きな課題になってくるものと思われます。
参考:「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(令和8年1月23日外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議決定)
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。



