
文部科学省から2025年度補正予算に提出された予算(案)に「日本語教員試験のCBT化に向けた試行試験の実施」が含まれています。令和7年度の日本語教員試験は全国8地区10会場で行われましたが、将来的にCBT化された場合、受験をめぐる状況は大きく変化します。ここでは日本語教員試験がCBT化された場合の影響を考えてみます。
CBT化の目的は登録日本語教員の増大
令和7年度補正予算額は1億円です。「令和7年度⽂部科学省関係補正予算(案)事業別資料集」では、以下のようになっています。
・⽇本語教育の推進のため、「⽇本語教育機関認定法」(令和6年4⽉施⾏)に基づく、各種制度・⼿続き等を円滑かつ確実に実施する必要がある。
・国内における多様な背景を持つ外国⼈等の受⼊れの進展や海外における⽇本の社会や⽂化への関⼼の⾼まり等を背景として、国内外での⽇本語学習ニーズの増⼤によって⽇本語教育が⼀層必要とされている中、登録⽇本語教員の質的及び量的な確保も必要となっている。
・登録⽇本語教員の登録を受けるために必要な⽇本語教員試験の受験機会の拡⼤等のため、コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)⽅式による実施について検討する。
目的は、「登録⽇本語教員の質的及び量的な確保」つまり登録日本語教員を増やすための「⽇本語教員試験の受験機会の拡⼤」にあります。
日本語教員試験の受験地の拡大
事業内容は、「⽇本語教員試験(国家試験)が、全国の拠点(テストセンター)においてコンピューター・ベースド・テスティング(CBT)⽅式により実施が可能か、試⾏試験を実施することによりその検証を⾏う」こととされています。
令和6年度から始まった日本語教員試験は、令和7年度の試験は2025年11月2日(日)に、大学などの全国8地区、10会場で行われました。受験者は決められた時間に、決められた試験会場で、一斉に試験を受験しました。試験では、紙の問題用紙やマークシートが配布され、受験生はそこに鉛筆でマークするという形式でした。
これが、CBT⽅式になると、全員が大会場で一斉に受験するのではなく、各人が全国の拠点(テストセンター)を受験会場として選び、所定の時間に会場で各自が受験するというスタイルに変わると思われます。そして、試験は全てコンピューターで行われます。
CBT⽅式とは
コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)⽅式とは、コンピューターを使って行う試験形式です。受験者は全国のテストセンターで、コンピューターの画面を見て、マウスやキーボードを使って受験します。
CBT⽅式は、現在多くの資格試験や検定試験で採用されていますが、日本語教育関連でも、JFT Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)がCBT方式で行われています。また、漢字能力検定(漢検)もCBT⽅式で行われていますが、現在では離島を含む全国47都道府県200超の会場で、年末年始を除いて通年実施されています。
CBT化のメリットとデメリット
・受験会場が増える。
何と言っても、これが一番大きなメリットではないでしょうか。令和7年度であれば、北海道在住者は札幌、東北在住者は仙台、中四国在住者は岡山(四国には会場がない!)、九州在住者は佐賀まで出かけて行って受験しなければなりませんでした。これは受験者にとって、精神面でも体力面でも金銭面でも大きな負担になっていたと思います。
・受験機会が増える。
統一の試験日が決まっているわけではなく、各人が候補日の中から受験会場と受験日を選びますので、これまでは既定の試験日に仕事や家庭の事情で受験できなかったという人も、自分の都合のいい受験日を選ぶことができるようになるかもしれません。また、例えば受験地で用事があるときに合わせて受験日を選ぶといったことも可能になります。
・結果が迅速に出る
CBT方式の場合、その場で合否結果がすぐに出るようになると思われます。また、何らかの制限がかかるかもしれませんが、一度不合格だったとしても、次の受験までにあまり長い期間待つ必要はなくなるように思われます。
これらのことを通して、受験者にとっては受験機会が拡大することになり、登録日本語教員の増加につながることが期待されます。また、これはあまり積極的にメリットとして出すべきではありませんが、現在、一部試験会場で問題になっている音声環境の不備なども解消されるのではないかと思われます。
一方、CBT方式になった場合、デメリットはあるでしょうか。
コンピューターを使った受験に慣れていない人は、最初は若干の戸惑いがあるかもしれません。例えば、紙の試験であれば、余白にあれこれメモを書き込んだり、印を付けたりすることも可能ですが、CBT方式の場合、そのようなことは難しくなります。敢えてデメリットとして挙げるとすれば、このようなことになるでしょう。
執筆:新城宏治
株式会社エンガワ代表取締役。NPO法人国際教育振興協会 日本語教師ネットワーク機構代表理事。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。



