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令和7年度日本語教員試験 応用試験に合格するために

令和7年度日本語教員試験の試験日が近づいてきました。受験される方は、準備は順調に進んでいますか? 皆さんの中には、経過措置を使い応用試験だけ受験するという人もいると思います。もちろん基礎試験から受験する人も、その後で応用試験も受験しなければなりません。ここでは、全員が必ず受験する応用試験に合格するための対策をご紹介します。

応用試験はどういう試験か

まずは「令和7年度 日本語教員試験 試験案内」を基に、応用試験とはどういう試験なのかを確認しましょう。応用試験は読解と聴解に分かれます。

読解

試験時間:100分

出題数:60問

出題形式:選択式

配点:1問1点(計60点)

聴解

試験時間:50分

出題数:50問

出題形式:選択式

配点:1問1点(計50点)

試験は、読解、聴解の順番で行われ、合間30分間の休憩があります。

応用試験では何が問われるか

応用試験は基礎試験同様、いわゆる「必須の50項目」から出題されますが、区分を横断する出題のため、基礎試験のように領域ごとの出題割合は示されていません。また、聴解試験では、日本語学習者の音声や教室での教員とのやりとりなどの音声を用いて、実際の教育実践に即した問題が出題され、問題解決能力が測定されます。

合格基準

合格基準は、総合得点、つまり読解と聴解の合計得点の6割程度の得点があることとされています。つまり、110点(問)中66点(問)解ければ合格になります。

総合得点で合格点が取れればいいので、(あまり考えたくはありませんが)仮に読解(あるいは聴解)で多少ミスしても、それは聴解(あるいは読解)でリカバリーすることができます。ですので、仮に先の読解の試験の出来が今一つだったとしても、決して諦めないでください。

ちなみに、令和6年度の試験では「6割」となっていましたが、令和7年度から「程度」という文言が付きました。

応用試験は何が難しいのか

昨年行われた令和6年度試験では、応用試験の中では聴解が難しかったという声を多く聞きました。

なぜ、受験者は聴解を難しいと感じたのか。その原因として考えられるのは、以下の3点ではないかと思われます。

・初めての試験で問題形式に不慣れであった。

・聴解試験ということでプレッシャーが大きかった。

・読解試験に比べて相対的に難しく感じた。

日本語教師向けの試験として以前から行われている日本語教育能力検定試験は過去問題が公開されています。そのため、過去問を一通り勉強しておけば、どういった種類・タイプの問題が何問出題されるといったことがわかります。ですので、日本語教育能力検定試験の聴解試験の対策は非常に立てやすいものでした。

しかし、日本語教員試験は過去の問題が公開されていません。もちろん、令和6年度は最初の試験でしたので過去の問題自体がないのですが、それでも事前にサンプル問題として公開されたものはごく一部でした。そのため、特に聴解では、全体の問題構成や、次にどんな問題が流れてくるのか予想がつかず、それによって受験者は難しいと感じたのではないかと思います。あらかじめ問題構成などが十分にわかって音声を聞くのと、全くわからないのとでは、印象が大きく異なってきます。また、そのことが受験者にとってはプレッシャーや焦りとなって現れたことも考えられます。

一方、読解はどうだったかというと、少なくとも時間的には余裕があったという声が多く聞かれました。これは100分で60問という、問題数に対する試験時間の長さからも推測できます。ただし、これは問題が易しいということでは決してなく、あくまで問題数に対して長めの試験時間が設定されているということだけですので、注意してください。

また、昨年と今年とで大きく変わったことがあります。それは読解と聴解の試験の順番です。令和6年度は聴解が先でしたが、令和7年度は読解が先になります。そのため、聴解の試験時間は16:10-17:00になります。特に午前中から基礎試験を受けている人にとっては、疲れのピークが来る時間帯に、集中力を必要とする聴解問題に取り組むのは、なかなか負担が大きいように思われます。

応用試験はどうすれば合格できるか

応用試験の合格基準は総合で6割程度ですので、読解でも聴解でもどちらでも、できるだけ高い点数を取っておいた方が楽になります。

そういう意味では、まず聴解の勉強、そしてトレーニングを十分にしておくことが重要だと思われます。これまでの日本語教育能力検定試験の結果を見ると、聴解試験は他の筆記試験のマークシート問題に比べ、標準偏差が高く、最高点も満点に近いという傾向があります。つまり、しっかり準備をした人とそうでない人との間では点数差が開きやすく、また、高得点を取りやすい試験だということです。

ただし注意が必要なのは、聴解は頭でわかっているだけではなく、音声を聞いてすぐに(次の問題の音声が流れてくる前に)解く力が必要だということです。この力をつける方法は、トレーニングあるのみです。市販の問題集や日本語教育能力検定試験の過去問などを使って、何度も繰り返し音声を聞いて時間内に解く練習を怠らないようにしましょう。

読解については、基礎試験よりも一歩踏み込んだ、応用力や思考力が試される問題が多く出題されます。こちらも、テキストを漠然と読むだけでは十分な力はつきません。市販の問題集や日本語教育能力検定試験の過去問などを使って問題を解き、わからなかったところは解説を読んだり調べたりといったことを繰り返すことで、本試験にも対応できる力が身につくでしょう。

最後に

日本語教員試験は現在、年1回しか受験機会がありませんので、受験するからにはぜひとも合格を勝ち取っていただきたいと思います。

試験が近づいてくると誰もが多少なりとも焦りを感じると思います。そんな場合でも、これまで勉強してきたことを復習して自分の知識を着実なものにし、また問題を解いて穴をなくしていくことで、焦りが少しずつ自信に変わっていくはずです。試験日までの残り日数を確認しながら、計画的に試験準備を進めていただければと存じます。

皆さんの合格を、心からお祈りしています。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の魅力を世界に伝えたいと思っている。

 

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