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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

オンライン日本語教師とは? ――その働き方、必要な資格、スキルを探る

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近年、インターネットツールの充実によって、日本語教師の働き方の一つとして注目されるようになってきている「オンライン日本語教師」。今回は、オンライン日本語教師になるために、どのような資格や知識、スキルなどが求められるのか、具体的にどのような働き方があるのか、などについて紹介します。  

オンライン日本語教師とは 

まず、「オンライン日本語教師」とは、どのような日本語教師のことを言うのか、確認しておきましょう。 

「オンライン日本語教師」とは、オンライン、つまり対面ではなく、インターネットを利用して日本語を教える人のことを言います。回線がつながる場所であれば、どこからでも授業を提供でき、相手の居場所も国内・海外を問いません。 

教え方の形態も、契約対象が個人なのか法人なのか、組織所属しながら教えるのかフリーランスで教えるのか、教える時間は自由なのか固定なのか、などさまざまです。

例えば、留学生を対象にグループ授業を行う人もいれば、学習者と個人的に契約を結んでインターネット上のプラットフォームを利用してレッスンをする人もいます。あるいは、法人と契約し、その法人に勤務する社員を対象にマンツーマンで行う人などもいます。このように、多様な教え方の形があるのがオンライン日本語教師の特徴だといえるでしょう。 

では、どんな人がオンライン日本語教師として教えているのでしょうか。近年増えているのが、最大の特徴である場所や時間に縛られないというメリットを活かし、家を離れるのが難しい子育て中や介護中の人が、ご自分の都合のよい時間に授業を行うケースです。また、近くに教える学校がない人や海外在住の人などもオンライン日本語教師として活躍しています。 

そのほかにも、経験や外国語スキルを活かして、ビジネスパーソンのマンツーマンレッスンをしている人や、日本語学校や大学で教える傍ら、オンラインでも教えるという人もいます。教え方の形態が多様であるのと同様に、教える日本語教師のバックグラウンドも多様だといえるでしょう。 

オンライン日本語教師になるには? 

オンライン日本語教師になるためには、どのような方法があるのでしょうか。また、どのような資格やスキルが必要なのでしょうか。 

まず、なるための方法ですが、準備するものとしては、パソコンやスマートフォンなど、インターネット回線につながれる環境が必須になります。レッスン途中で通信が途切れたりすると、ストレスやトラブルの元になるので、安定した接続状態を保てるよう、通信環境を整えましょう。授業に集中できるよう、周囲の騒音などが入らない静かな場所の確保も考慮しましょう。

また、万一、システムトラブルが起きた場合、ある程度、自分で対処できるネットスキルもあることが望ましいといえます。場合によっWEBカメラやイヤホンといった機材も必要になります。 

次に、学びたい人とつながるための方法としては、オンライン日本語スクールの講師として登録する、学びたい人と教えたい人をマッチングするプラットフォームなどに登録する、人から紹介してもらう、などの方法が考えられます。求められる資格やスキル、レッスン料やレッスン時間、教える内容など、条件はさまざまなので、自分に合った方法を見極めましょう。

オンライン日本語教師に必要な資格 

日本語学校などでは、これまで採用要件として、420時間以上の養成講座修了、日本語教育能力検定試験合格などが定められていました。さらに、今後、認定を受けた日本語教育機関で教えようとする場合、国家資格「登録日本語教員」が求められるようになります。 

一方、ンライン日本語教師の場合は、所属するスクールなどによって求められる資格はさまざまだといえます。経験年数、日本語教育能力検定試験合格、登録日本語教員資格の有無、学歴、語学力など、高めの条件を設定しているスクールもあれば、そういった資格は求めないところもあります。また、フリーランスの場合は、相手が求める条件が最も重視される傾向が強く、資格が必須というわけではありませんが、持っていることは教師としての信頼性を証明できるため、アピール材料の一つになるでしょう。 

以下、オンライン日本語スクールに所属する場合、フリーランスの場合について、もう少し詳しく説明します。 

スクールに所属する場合 

オンライン日本語スクールなどに、講師として登録する場合、求められる資格はスクールによってさまざまです。 

例として、アルクオンライン日本語スクールの場合を紹介しましょう。アルクオンライン日本語スクールが採用条件に定めているのは、 

大学または大学院にて日本語教育を主専攻または副専攻で修了した方 

日本語教師養成講座420時間以上を修了した方(学士以上) 

日本語教育能力検定試験合格者(学士以上)のいずれかを満たした方 

その上で、日本語教育機関の体系的なカリキュラムで3年(約1000時間)以上の教育経験を必須としています。書類選考の上、面接、模擬授業、研修を経て、レッスンスタートになります。 

講師登録が済んだら実際に担当する授業を決めるステップに進みます。アルクオンライン日本語スクールの場合は、基本的に受講者が閲覧できるスケジュール表に自分がレッスン可能な時間帯を入力しておき、受講者がそれを見ながら予約を入れる方法が取られています。スクールによっては、レッスン時間が固定的に決まっていて自分がレッスン可能な時間帯に入る場合もあります。いずれにしても、自分の都合に合わせてスケジュールを組みやすいといえるでしょう。 

個人で開業する場合(フリーランス) 

フリーランスとして開業する場合、特に求められる資格はありません。教える人と学ぶ人の人、双方の求める条件が折り合えば個人間で契約ということもあります。学びたい人を見つけるため、教えたい人と学びたい人を結ぶマッチングシステムに登録して開業する方法もあります。その場合、必要となる資格は、その登録しようとするプラットフォームによってさまざまです。 

いずれにしても、いわば個人商店として「日本語教師」の看板を掲げることになるため、やはり日本語教育関連の資格や経験に加え、業界知識やビジネス経験、外国語能力など、プラスαの知識やスキルなど、アピールできる強みがあったほうが学びたい人の目を引き、選ばれやすくなるといえるでしょう。 

オンライン日本語教師に求められるもの 

オンライン日本語教師は、インターネットを介して授業を提供することになるため、自身で通信環境を整えることが必要です。また、授業で使用するオンラインツールを使いこなせることや、通信状態に問題が発生した際に対応できるよう、一定のネット知識も必要です。その上で、オンライン日本語教師に求められるものを考えてみましょう。 

まず、オンライン授業は画面を通して行われるため、対面授業以上に、目線や仕草、表情などに気を配ることが求められます。相手を見ているつもりでも画面上では目線がずれていたり、下に置いた教案を見ていて前を向いたときに目がぼやけて映ることもあるので注意しておく必要があります。 

仕草に関しては、企業内定者対象の授業などでは、社会人として失礼な印象を与える仕草になっていないか注意しましょう。また、無表情では受講者に緊張感や威圧感を与えるので笑顔も大事です。画面に映る範囲が狭い分、対面授業よりも、目線や仕草、笑顔などは意識的になる必要があります。 

加えて、相手の言いたいことをくみ取り、言葉による問いかけで、それをうまく引き出す力も求められます。対面ではボディランゲージや場の雰囲気で伝わることも、画面を通すと伝わりにくく、その分、言葉によるコミュニケーション力が求められるといえるでしょう。画面に映る範囲が狭いので、体全体を使ったゲームなど、動きのあるアクティビティもやりにくいということを頭に置いて授業の内容を考えることが求められます。 

最後に、オンライン日本語教師には、著作権に関する知識も求められます。学校法人では許容されることも営利目的のオンラインスクールの授業では著作権法に抵触する恐れのあるものがあります。 

オンライン教師は、学校の職員室のような場がないため、他の教師との接点が持ちにくいという側面もあります。知識をアップデートしたり、教え方を共有したりするためには、横のつながりを積極的に持つことも必要でしょう。 

外国語能力

オンライン日本語教師に求められるスキルの一つに外国語能力が挙げられます。特に入門期や初級の学習者の場合、自分の言語で質問できることは安心感にもつながりますし、やりとりできる情報量が多くなります。また、授業以外の場面、例えば、通信トラブルが生じた場合や予約を入れるといった時も、学習者の母語であれば、やりとりがスムーズになります。英語はもちろん、それ以外の語学ができることはオンライン日本語教師の場合、強みになります。 

代表的なオンライン日本語スクール 

よく利用されているオンライン日本語スクールを紹介します。 

アルクオンライン日本語スクール

株式会社アルクエデュケーションが運営するスクールです。アルクエデュケーションが契約を結ぶ法人で、日本語研修が必要な学習者を相手にマンツーマンレッスンを行います。入門コース、初級コース、ビジネス日本語コース、ビジネス敬語コースなど、多様なコースが用意されています。講師採用は欠員が出たときに行っていますが、資格要件に、420時間以上の養成講座修了や検定試験合格、教育経験3年以上が求められます。 

https://nihongo.alc.co.jp/ 

italki

オンライン上で、ネイティブ講師と言語学習者を結ぶためのプラットフォームです。香港に本社を置く「italki HK Limited」が運営しています。日本語のほか、英語、スペイン語、中国語など、150以上の言語のネイティブ講師が登録し、マンツーマンレッスンを提供しています。日本語の講師として登録する場合、プロ教師とコミュニティチューターの2種類があり、それにより求められる資格やレッスン料金も異なります。 

https://www.italki.com/ja

Akira Online Japanese School TOKYO

Fujisaki LLCが設立、運営するオンライン日本語スクールです。英語圏のアッパー層(経営者、医師、弁護士など)を主な対象にプライベートレッスンを行っています。日本語スピーキングテスト「JSST」を使った会話力向上にも力を入れています。講師に応募したい場合、同社が開催するオンライン説明会に参加することが必要です。420時間以上の養成講座修了や検定試験合格などの資格のほか、間接法でのレッスンになるため、TOEICスコア800以上相当の英語力が求められます。

 https://akiraojs.tokyo/assets/images/recruit/guideline.pdf

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実際のオンライン日本語教師の声 

実際に、オンライン日本語教師として活躍されている人からは、どのような感想が聞かれるのでしょうか。 

よく聞かれるのは、学習者の学ぼうとする意欲が高く、レッスンするのが楽しいという声です。オンライン授業は、卒業に必要な単位取得するためといった強制力がない分、本人の学びのモチベーションが高くないと続かないという面があります。そのため、とても熱心な学習者が多く、教える側としてやりがいを感じている人が多いようです。 

もう一つは、いろんな学習者と出会えるのが楽しいという声です。日本語学校では主に留学生を教えますが、オンライン授業では、現地採用の渡日前研修生であったり、海外で働いているビジネスパーソンであったりと、日本にいては出会えない、多様な学習者を教えるチャンスが多いという意見が聞かれました。 

マンツーマンで教えることも多いため、じっくり相手と向き合い、希望に沿った授業を提供することができるのがよいという声も多く聞かれます。 

 まとめ

以上、年々、オンライン日本語スクールやプラットフォームの数は増えており、サービス内容も充実してきています。それに伴い、オンライン日本語教師のニーズも高まっているといえるでしょう。求められる資格やスキルはさまざまですが、その分、自分に合う教え方の形も見つけやすくなっているといえます。オンライン日本語教師として教えてみたいと思われたら、勇気を持って最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。 

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