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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教師のための著作権③-ネットの情報や動画の利用について

日本語教師の皆さん、授業の準備や授業中、宿題やテストを作成するときなどに「これって著作権的に大丈夫なのかな」と不安やモヤモヤを抱えることはありませんか。アルクではそんな日本語教師の方々にアンケートを取り、具体的にどんなことに疑問を持ったり知りたいと思ったりしているのかお聞きしました。この連載では、著作権についてのモヤモヤが少しずつ晴れることを目指して、アンケートに出た疑問に著作権の専門家がお答えしていきます。記事の最後で、本テーマを更に詳しく解説するセミナーのご案内もしています。(執筆/我妻潤子)

本記事も3回目を迎えることになりました。3回目は少々趣向を変えて、日本語教師である田中先生と筆者である我妻の対話形式で進めていきたいと思います。

1)ネットの情報の利用について

複製と公衆送信

言葉の定義

複製:著作物を有形的に再製すること(手段は問いません)

公衆送信:著作物を公衆に対し、放送波やインターネット回線などを通して送信すること(オンライン授業で著作物を提示する資料共有ファイルで授業するなど)

「ネットの情報」と一言に言っても新聞記事やイラスト、写真、音楽、動画など、いろいろな素材があります。これらを著作権(著作財産権)という視点で見る場合、素材ごとの違いはあまりありません。著作権はこれらの著作物をどのように利用するかという行為に関わります。例えば、新聞記事をスクリーンショットしてPPT資料に転載したり、記事を手打ち(手書き)でPPT資料に転載したりする行為は、著作物を「有形的に再製」した、つまり「複製」したことになるので、複製権が関係します。

「公衆送信」の場合、インターネット回線を利用してPCのカメラや書画カメラなどで直接著作物をみせることも該当します。また、新聞記事が転載されたPPT資料をオンライン授業などで利用しようとすると、新聞記事を転載する行為は「複製」に値し、かつ、その資料をオンライン授業で(インターネット回線を利用して)、受講生に提示しているので「公衆送信」したことになります。一見、一つの行動と見えることも権利という視点で分けて考えてみると、著作権を理解するコツが掴めるのではないでしょうか。

≪ネット情報の利用≫

田中先生:授業で使うPPT資料に著作権フリーのイラストを使おうと思っています。注意すべきことはありますか?

我妻:ネット上のフリーのイラストを使う時に気を付けなければならないことは2点あります。1点目はイラストを検索するときに「著作権フリー」や「●● イラストフリー」というワードで検索することは避けた方がいいと思います。検索結果のなかに「著作権フリー」でないものが含まれるからです。では、どういう言葉で検索をかけるといいか、というと「商用利用可」で調べてみて下さい。そうすると、授業で使いやすいイラストの検索結果が出てくると思います。

ただし、その検索結果で出てきたイラストをそのまま使うのは避けて下さい。そのイラストが掲載されているサイトのトップページにいき、必ず「利用規約」、「ご使用の前に」などを確認して下さい。

田中先生:なるほど「商用利用可」で検索し、「利用規約」を確認しなければならないんですね。ちなみに、動画配信サイトの動画を使う時も同じように利用規約を確認しなければならないんですか。

我妻:そうですね。最近はいろいろな動画配信サイトがありますが、それぞれ利用規約があります。授業中に見せたいなど、普通に自分や家族だけで視聴する以外の利用をしたいときには、必ず、各動画配信サイトの利用規約を読んで下さい。

田中先生:そうすると、新聞記事なども利用規約を確認しなければならず、授業などで新聞記事を利用するのって難しくなるのでしょうか。

我妻:確かに、新聞記事は難しいですよね。例えば、ネット記事などの場合は、見出しとURLだけを提示して、学習者に直接そのネット記事のサイトを見てもらうというようにするというのが1つの手段です。また、AIを使って新聞記事風の文章を書き、それをリライトしてもらうというのも手段としては有効でしょう。

2)動画の利用について

映画の著作物の前提

映画の著作物は、「映画」という言葉から劇場用映画などのみが対象と思われがちですが、テレビ番組やYouTubeの動画、ゲーム映像などが含まれます。また、映画の著作物は権利の集合体です。テレビドラマを例にしてみましょう。原作があるドラマ作品の場合は原作者、原作の有無かかわらず、脚本家、お芝居をする人(実演家)、BGMなどを担当する作曲家、お芝居を演出する演出家(監督)や撮影を金銭的な意味も含めて指揮をするプロデューサーなど、様々な権利者がいます。一見、単純そうなニュース番組だとしてもアナウンサーが読み上げる台本、アナウンサー、外部のナレーターが使われていればその人にも権利があります。

YouTubeなどの動画の場合は、動画投稿者が撮影と出演を兼ねている場合が多く、動画投稿者が権利者と推定することができます。ただし、動画のBGMとして使われている音楽については、権利者が別になります。

≪動画の利用≫

田中先生:ドラマや映画、ニュース等を教師が録画したもの、もしくは学校で購入・レンタルしたものは授業内で利用可能でしょうか。

我妻:著作権法上の学校法人に該当する日本語学校の場合、授業を担当する者つまりそのクラスを担当する先生が録画したドラマや映画、ニュースなどを受講生に見せることは問題ありません。そうでない場合は市販されているDVD・ブルーレイなどを購入し、部分的に見せることは可能です。レンタルについては、冒頭に私的に視聴することを目的とすると注意書きがありますので、授業内で視聴することは避けた方が良いと思います。

田中先生:では、YouTube上の動画は授業内で利用してもよいのでしょうか。

我妻:YouTubeの利用規約を確認するといくつかの禁止事項が記載されており「本サービスを個人的、非営利的な用途以外でコンテンツを視聴するために利用すること」( https://www.youtube.com/t/terms#75dc8afb61)とも記載されています。よって、YouTubeに投稿されている動画を見せる場合には、URLリンクを提示し、受講生各人に視聴させるという方法であれば、利用することができます。

田中先生:TVer、NHKプラス、Hulu, Amazon Prime、Netflix、ABEMAなどの動画配信サイトの動画は利用可能でしょうか

我妻:これらも各サイトの利用規約をまずは確認してください。それぞれのサイトで利用規約が異なります。例えばTverは問題なく使えるようですが、NHKプラスは引用の範囲をこえるような場合は、学校法人の日本語学校でも、そうでないとしても難しいようです。

田中先生:授業でアニメ動画の一部を使う場合はどうですか。問題ありますか。

我妻:そうですねぇ。学校法人である日本語学校の場合であれば、35条が適用される可能性が非常に高いと思うのですが、田中先生は株式会社立の日本語学校の先生でしたよね。その場合「引用」の条件をクリアすれば、権利者から許諾を得ずに利用することも可能でしょう。「引用」の条件を覚えていますか。

1)すでに公表された著作物であること

2)改変しないこと

3)必然性があること

4)明瞭区分

5)主従関係

6)氏名表示

これらの6つの要件を1つずつ考えてみましょう。まず、田中先生が利用しようと思うアニメ動画は既に公表されていますよね。なので「1)公表された著作物である」はクリアできます。2つ目に「改変しないこと」については、アニメ動画の1シーンを「そのまま」抜き出す場合には問題ないとされています。しかし、1つの作品から複数箇所を抜き出し、順番を入れ替えるというような構成を変えてしまう編集を行うと「改変」とみなされる可能性が高くなると思われます。今回の場合はどちらですか。

田中先生:1つのアニメ動画から1シーンのつもりでいました。

我妻:それであれば、2つ目の「改変しないこと」もクリアできますね。

次に、3つ目の「必然性」について、これが田中先生の質問の一番のハードルとなる点でしょう。田中先生が使いたいと思っている「その」アニメ動画を利用する理由が求められます。別のアニメ動画でも代替できるような利用の場合には、「必然性」は低くなると思われます。このアニメ動画でなければならないという理由を用意しておきましょう。

4つ目「明瞭区分」は例えばアニメ動画教材の中に「アニメ動画」としてインサートするというようなことでなければ問題ないと思います。田中先生がアニメ動画を作成するわけではないですよね。

田中先生:はい。自分の授業解説の一部としてアニメ動画を見せたいと思いました。

我妻:それであれば、自分の著作物(授業解説)との区分は明確でしょう。なので、「明瞭区分」もクリアできましたね。5つ目の「主従関係」については、田中先生の授業が「主」で、アニメ動画はその授業をより充実させるための「補助」として利用する、ということであれば問題ないと思います。一概に量で測ることはできませんが、「補助」としての役割を超えるような使い方、例えば、50分授業のなかで50分全てアニメ動画を視聴させるなどという場合は「主従関係」は成立しません。

6つ目の「氏名表示」についても、著作権法上では表記の仕方には言及されていませんので、紙資料としてアニメ動画のスクリーンショットを引用する場合は著作者名を表記する、アニメ動画などを電子黒板などに上映する場合は「●●の作品『■■■』でした」と読み上げることで要件を満たすでしょう。引用は、権利者からの許諾を得ずに著作物を利用することなので、要件を満たすかどうか考慮する場合には第三者からみても要件を満たすかどうかがポイントになると思います。

≪動画の改変利用≫

田中先生:なるほど。引用の6つの要件を全てクリアすることで、利用できる可能性が高くなるということですね。    

では、例えば、授業内でアニメ動画のワンシーンのショートの切り抜きを見せるのはどうですか? たとえば「〜をください」と言っているシーンをいろんなアニメから集めてみせるとか。

我妻:まず、その切り抜かれたアニメ動画は、公式のアカウントから配信されているものですか。YouTubeなどの動画投稿サイトには個人が切り抜き、ショート動画としてアップロードしているものがたくさんあります。これらのショート動画を利用者がダウンロードして見せてしまうと刑事罰として処罰される可能性が高くなります。公式アカウントからアップロードされているものではないため、権利処理をして許諾を得るということもできません。

また、田中先生が自分自身で録画した複数のアニメ動画から「〜をください」と言っているシーンだけを編集して1つの動画にした場合、これは「改変」に該当してしまいます。「改変」は学校法人でも、株式会社立の日本語学校でも、無断で行うことはできません。また、自身の作品の主旨が変わってしまうため、多くの権利者は好まず、承諾を得ることは難しいでしょう。アニメ動画を使うのではなく、商用利用可のイラストサイトから複数のキャラクターを利用して、自身で教材を作成するのが、著作権法上安全だと思います。

まとめ

・自分が著作物を利用する際には、どんな行為をしようとしているのか、著作財産権の視点で分解して考えること

・ネットの情報を利用する際には、利用規約を確認すること

・ネットの情報を利用するために検索する場合は「商用利用可」というキーワードを入れること

・映画の著作物は権利の束である

・引用は学校法人の日本語学校でも、そうでない日本語学校でも適用できる

我妻潤子 プロフィール

株式会社テイクオーバル コンテンツライツ事業部長、AIPE認定知財アナリスト(コンテンツ・ビジネス)、東京藝術大学非常勤講師。生徒、学生、教員の他、日本語教師を対象とした著作権についてのセミナーや講演の講師を務め、特に利用者、権利者の両面からの解説には定評がある。

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