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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

授業の作り方2025-オンラインレッスンの特徴と注意点

2020年4月、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴いそれまで対面で行ってきた日本語授業をオンライン授業に切り替えるという対処が取られました。これを読んでいる皆さんに中には、戸惑いながら手探りでパソコンに向かう日々を過ごした方も多いのではないでしょうか。留学生が再び来日できるようになった今、オンラインレッスンは対面授業の代替品ではなく、気軽に行える授業の選択肢の1つとなったように思います。気軽さゆえの落とし穴もあるものです。オンラインで対面授業と全く同じ授業を展開しようとしても難しく、同じ効果が得られるとは限りません。反対に、上手に使えば対面以上の成果を得られる場合もあるでしょう。今回は、あらためてオンラインレッスンの特徴と注意点を考えていきましょう。(望月雅美)

オンラインの特徴と機能の活用法

等しく見える・聞こえるカメラ&マイク機能

オンラインのメリットの1つは、カメラとマイク機能により、対面以上に対面になる点です。カメラをオンにしてもらえれば、これまで大教室の一番後ろの席で小さくなっていた学習者も、最前列で大きな声で授業に参加していた学習者も、等分割の画面でそのお顔を確認できます。1人1人と正対することができますので、発音や発話を確認するのに便利です。

また、オンラインの画面上では等間隔に学習者が並んでいますので、どの学習者とも距離を考えずに組んでやりとりしてもらうことができます。地声の小さな学習者に大きな声を強要しなくても、音量で調整することができます。対面からオンラインに切り替わった後、対面の時よりもたくさんアウトプットができた気がすると言っていた学習者もいました。

一斉に送ってもらえるチャット機能

2つ目はチャット機能の活用です。チャットの宛先を「全員」にすればクラス全員のコメントを一度に共有することができます。たとえば、授業開始時に「週末何をしましたか。チャットに送ってください」と伝えてそれぞれに答えを送ってもらえば、みんなの週末の状況を一度に把握でき、そこから話を広げてウォーミングアップに繋げることができます。また、授業の最後に「今日勉強した○○という(文型/ことば)を使って文を作って送ってください」「今日の授業で印象に残ったことを送ってください」と伝えれば、その日の授業の振り返りをクラスで共有することができるでしょう。

また、チャットの宛先を個人にすれば、個々にダイレクトメッセージを送ることができます。教師宛に回答を送ってもらえばそれぞれの学習者の理解度が一度に確認できますし、他の学習者に知られないように教師から学習者個人宛にアドバイスや注意のメッセージを送ることもできます。

「場」の活用

対面授業では、教師と学習者が同じ「場」にいることが大前提ですが、オンライン授業では教師と学習者が異なる「場」にいます。「場」が違うということはそこにたくさんのインフォメーションギャップが存在するわけです。これを授業に活用してみましょう。

たとえば、オンラインレッスンでは教室に持ち込めなかったものが活用できます。和室から授業を行えば畳や障子等を見せることができますし、台所の調理器具などを実際に使って見せることもできます。学習者の学習環境について説明してもらうのもいいですね。海外からの学習者なら、「今日はとても寒いです」「ドアが開けられないほど雪が積もっています」など、その地域の天候や時間などを実況してもらいます。可能であれば窓の外や時計の現在時刻を見せてもらうのもいいでしょう。ある授業では、学習者が家のクリスマスの装飾や趣味のコレクションについて実物で解説してくれたことがありました。究極の生教材で語りたい内容を語る、臨場感のあるやり取りだったと思います。

他にも、「(何か柔らかいもの)を持って来てください」等、借り物競争などもできますね。ただし、個人情報を強要することのないように十分配慮してください。

その他の機能-画面共有、ブレイクアウトルーム

対面授業ではプロジェクター等で資料を映しながら授業を行うようになりましたが、オンラインでも画面共有を用いて同様の授業ができます。これにより、口頭での説明が難しいものも動画や画像を共有しながら説明することができます。教師からだけでなく学習者からも共有してもらえますので、互いにより豊かな情報提供ができるようになったと言えるでしょう。

また、ブレイクアウトルーム機能を使えば、ペア(グループ)ワーク活動を行うことができます。学習者同士が互いのグループをのぞき見ることはできないのですが、進捗状況を記入するスプレッドシートを準備しておけば、各グループの書き込みをみることで互いの進捗状況を知ることができます。

さまざまな機能を駆使すればオンラインレッスンの可能性はどんどん広がっていきますが、同時に、デメリットがあることも忘れずにいたいものです。次に、オンラインレッスンで注意しておきたいことをみていきましょう。

オンラインレッスンの注意

オンラインレッスンでは、さまざまな機能を駆使することで、対面と同じもしくはそれ以上の効果的な授業ができます。一方で、上手に使わなければこちらの音声をただ流すだけの授業となりかねません。授業を始める前、そして授業中にどんな点に気をつけたら良いか、それぞれの注意点を見てきましょう。

授業を始める際の注意

1回目の授業の前に、筆者は授業のルールとして、カメラとマイクはオンにするよう学習者に伝えています。カメラのオンオフは学習者に委ねられています。体調不良やメンタルの不調、通信環境の問題等でカメラをオフにせざるを得ない状況もあります。オフにしてでも学習したいという学習者もいると思います。しかし、残念ながらサボりたいという無精な理由でオフにしたがる学習者もいます。先にも述べた通り、カメラ機能による学習効果もあります。特別な事情がない限り、カメラはオンにする習慣をつけておくことをおすすめします。

初級のクラスでは、教室用語として「(音が)聞こえますか」「聞こえます/聞こえません」「(画面が)見えますか」「見えます/見えません」を導入しておきます。授業開始時には1人ずつ声を出してもらって動作確認を行うと良いですね。何か問題がある場合、上記の教室用語でチャットに書きこんでもらう、メールで事情を送ってもらう、一度入り直してもらう等、いくつかの対処法を事前に伝えておきましょう。

授業中の注意点①―画面上の限界―

それぞれの学習者と正対できることがオンラインのメリットだとお話しましたが、一方で、オンラインで見えなくなるものもあります。

まず一番は、学習者の手元です。学習者が教科書のどこを見ているのか、何を書いているのか、顔だけが映る画面からは知ることができません。教師の手元を見せたい、あるいは少人数クラスで学習者の手元が見たいという場合、1人が2つのデバイスから授業に参加するというのも1つの方法です。たとえば、パソコンで通常通りに授業に参加しながら、同時にスマホでカメラだけをオンにして入室し、手元を映し続けるという方法です。しかし、設定するのに少し手間がかかりますし、大人数クラスで学習者に2つのデバイスから入ってもらうのはあまり現実的ではありません。手っ取り早いのは、こまめに指示を出すことです。「書いた人は見せてください」と言ってカメラに映し出してもらったり、「○ページ、開けましたか。○○さん、1行目に何と書いてありますか」と同じページが開けているか口頭で確認したりします。

正対していながらアイコンタクトがとれないというのもオンラインの難点です。目線やジェスチャーで個々の学習者に指示を出すことはできません。良くも悪くものぞき見やコソコソ話ができないので、学習者が隣の席をチラッとのぞいて確認するようなこともできません。つまり、コミュニケーションが音声頼みになってしまうのです。対面の時以上にテンポよく、こまめに指名する等、音声による指示の出しかたを考えましょう。

初級で学習する「あげます」「くれます」などの授受表現や「行きます」「来ます」などの往来動詞も、実際に学習者を相手に動いて見せればわかりやすいのですが、それもオンライン上では難しいことです。絵カードや動画など別のツールで対応しましょう。

オンラインレッスンは普段私たちが何気なく使っている音声以外のコミュニケーション手段を意識化できる機会と言えるかもしれません。

授業中の注意点②―音声上の限界―

オンラインでのやりとりは1対1が基本です。全体に質問をしてパラパラと複数名が答えたとしても、オンラインでは同時に発した声はなかなか聞き取れません。「合唱―個々―合唱」の「合唱」も通信環境ごとに声の遅れが生じ、対面のようにはいきません。一斉に答えてほしい場合は、たとえば答えの番号を画面に向かってジェスチャーで示してもらう、一斉にチャットに入力してもらう、など音声以外の方法をとると全体が把握しやすくなります。「合唱」やシャドーイングを行いたい場合は、学習者側はミュートにしてもらい、教師側の音声を聞きながら個々に声を出して練習し、教師はそれぞれの口の動きを見て確認するという方法が考えられます。

授業中の注意点③―多機能の多用―

さまざまな機能を活用したいところですが、通信環境によってはデータ使用量が大きくなるとうまく作動しない場合があります。機能の操作に夢中になって肝心な授業内容が疎かになっては本末転倒です。必要最小限の機能を効果的に使いたいものです。

たとえば、ホワイトボード機能は対面の板書と同じことができますが、その機能を使う代わりに、100円ショップ等で売っている小型のホワイトボードを使って、手書きしたものをカメラに映して見せても良いと思います。

授業中の注意点④―「教師―見せる人/学習者―眺める人」になっていませんか―

スライドやホワイトボード機能で気をつけたいのは、教師のペースで画面を進め、「見せて終わり」になってしまうことです。「今から例を3つ見せますから、よく聞いてください」「この質問の答えを今から(チャットに/ノートに)書いてください」等、見せた資料を使って学習者に何をしてほしいのかきちんと伝えましょう。必要に応じて読むための時間、書くための時間をとることも大切です。

オンライン授業はじっと画面を見つめるだけになりがちです。感情をこめて読む、書く、教師の真似をして動くなど、動きのある授業を心がけましょう。画面の向こうにいる学習者がどんな動きをしているのか、常にアンテナをはっておきたいものです。

授業が終わったら

授業のまとめとしては、先の通りチャット機能で振り返りを送ってもらったり、授業で使ったスライドを要点だけ見直していったりする方法が考えられます。

終了時間になったら一斉終了、でも良いのですが、「質問がなければ退出してください」と声をかけ、退出のタイミングを学習者に委ねても良いと思います。以前「みんなの前では質問しにくい」という学習者がいたことから、筆者はこのような終わり方にして個々に対応する機会としています。古くには「見送り七歩」という言葉もあります。オンラインになっても学習者を見送る余裕が作れると良いですね。

執筆:望月雅美

さまざまな日本語教育機関でこれまで8~88歳の日本語クラスを担当。現在、埼玉大学日本語教育センター非常勤講師兼諸々。著書に『日本語教師の7つ道具シリーズ1授業の作り方Q&A78編』(大森雅美名義、共著)『どう教える?日本語教育「読解・会話・作文・聴解」の授業』(共にアルク)などがある。音楽と笑いと自然を愛する3児の母。

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